通訳者になるためのおすすめ教科書『通訳の仕事 始め方・続け方』

イカロス出版から出版されていた『通訳の仕事 始め方・稼ぎ方』が、このたび日本会議通訳者協会(JACI)による執筆協力を得て、『通訳の仕事 始め方・続け方』に全面改訂されました!

この『通訳の仕事 始め方・続け方』は、

  • これから通訳者になろうと思っている
  • 通訳者としてどのように仕事を進めればよいかわからない

そんな方のために、通訳者として活躍しているエキスパートが通訳の仕事、スキルの身につけ方、仕事の増やし方やお金のことまで、具体的に解説しています。

まさに通訳者として自立するための知識とノウハウが凝縮された一冊です。

そんな通訳者の教科書に、私も執筆協力させていただきました!担当したのは「通訳者の料金交渉」です。

通訳業はビジネスです。楽しいだけでは続けることはできません。

長く、楽しく続けるためにも「お金」に関する知識、ノウハウ、マインドセットが必要不可欠。その大事な部分を任されたことを、とても光栄に思います。

それでは、『通訳の仕事 始め方・続け方』の見どころを紹介します。

Part 1 入門編 通訳の仕事と魅力

まずは、通訳とはどのような仕事なのか、どのような手法があるのか?など、通訳の仕事について詳しく解説しています。

普段あまり語られない「通訳の仕事現場」の具体的な話や、「ビジネス通訳、放送通訳、司法通訳」など、通訳といっても様々な種類や専門について詳しく知ることができます。

これから通訳者になろうと思っている方

この章で通訳の仕事とは何か?を知ることができます。これから通訳者になろうと思っている方は、そもそも、

  • 通訳者ってどんなことをするのだろう?
  • 通訳といっても色々と専門があるの?何が違うんだろう?

のような「実際に通訳者として社会に出ないとわからないこと」がわからないものですが、その部分を知ることができます。
漠然と「通訳者になる!」と思っている人は、「この専門の通訳者で、こんな仕事に関わりたい」というハッキリとした目標ができるので、これから何をすればよいのかが明確になりますよ。

新人通訳者の方

新人通訳者の方は、まだ右も左もわからない手探り状態だと思います。私も新人の頃はそうでした…。デビューして何年かたったのちに、放送通訳の勉強のために学校に通っていた時期もありました。

この章では「通訳の仕事」についての全体を把握できます。自分が仕事をしている業界の全体を把握することで、今自分がいるポジション、どこを目指せばよいか、今後どう進めていけばよいか、などが見えてくると思います。

Part 2 入門編 通訳スキルの身につけ方

通訳は外国語が喋れればできる仕事ではありません。人前で聞きやすい喋り方ができるよう、スピーチ力も必要ですし、通訳する専門分野に関する知識も必要です。その知識を仕入れてくるためのリサーチ力も必要ですし、当日になれば、スピーカーやパートナー通訳者とのあいだで円滑にやりとりするためのコミュニケーション力も求められます。そういった様々なスキルが詳しく解説されています。また、それらのスキルをどう身にけたらよいのか?についても、具体的に説明があるので、大いに参考になると思います。

Part 3 実践編 仕事の始め方・進め方

実際に通訳者としてデビューするにあたって、そして仕事をするなかで、どういう注意点があるのかが詳細に述べられています。通訳技術そのものについてではなく、ビジネスとしてどうやって展開するのかについてのパートになります。

具体的には、通訳エージェントへの登録方法や、職務経歴書の書き方、さらには業務日当日の動きが、現場案件の場合と遠隔案件の場合、両方について書かれています。

このパートには、私が執筆協力した料金交渉も含まれています。

新人通訳者の方

私が現時点で知っていること、経験したことを余すことなく盛り込みました。私はフリーランスになってから何年ものあいだ、エージェントに仕事をもらう受け身の姿勢でした。能動的になって大手エージェント以外に販路を開拓したくても、どうやって顧客を見つけて、やり取りをしたらよいのか、わからなかったし、恐怖心もありました。そんな当時の自分に向けて書いたつもりです。まだデビューして間もない方でも、このパートを読むことで、悶々と悩んで過ごしてしまう時間を少しでも短くしてもらえればうれしいです。

Part 4 実践編 仕事の増やし方&稼ぎ方

ここでは様々なキャリアの積み方、レート、専門性を持つことの重要性、調べものの仕方、遠隔通訳のハウツーなどが述べられています。どれも大変重要なことばかり。しかし特に、「専門知識を身につけよう」のパートがおススメです。

日本の通訳業界では、ジェネラリストとして稼働することが多いです。というより、「それだけやっていて食っていける」専門分野があまりないので、結果的にジェネラリストにならざるを得ないといった方が正しいかもしれません。

ただ、実態はジェネラリストにも見えるような実績であったとしても、自分が追及していきたい、積極的に実績を積みたいと思うような分野をいくつか持ち、外部に向かってアピールすることは大変重要だと思います。そのような専門性を持つことのメリットが、マーケティングの面や通訳業務の面から具体的に説明してあります。

新人通訳者の方

実際には、デビューしたてのころは多種多様な案件に挑戦することで、自分を知る時期になることが多いです。その際におススメなのが、記録を取ること。

各案件ごとの時間や内容といった「仕様」的な情報だけでなく、自分の気持ちを書き留めておくことが、とても効果的です。どんな些細なことでもいいし、クライアントからかけてもらった言葉でも構いません。そういった記録を続けていくことで、自分が得意な形態、自分が価値を発揮できる領域がだんだん明らかになっていきますよ。

執筆協力を終えた感想

手前味噌で恐縮ですが、いい本だなーと思います。「今後10年、新人通訳者に求められる」内容がもりこまれているからです。

私がフリーランスになったのは2009年ですが、当時ビジネスとしての通訳業を相談できる相手も、場も存在していませんでした。

それがいまはJACIができたおかげで、同業者と横のつながりを持ち、相談をしやすくなりました。デビュー間もない通訳者の方には、是非この本とJACIを活用していただきたいと思います。巻末の特典動画も本と同じか、それ以上の価値がありますよ!

絶対に持っておいた方がいい一冊です。自信をもってお勧めします!