こんにちは。東京で英日会議通訳をしている山本みどりです。
前回のブログでは、オンライン会議を円滑に進めるコツを紹介しました。今回はその続きとして、『オンライン会議における同時通訳のやり方』について説明します。
同時通訳というのは、話者が話した内容をほぼリアルタイムで訳していく手法で、会議の時間を有効に使いたい場合に採用されます。通訳者は2名でチームを組んで交代しながら訳します。
オンラインで遠隔通訳をするためのツール
オンラインでの遠隔通訳をするには、大きく
・専用のツールを使う方法
・一般的なオンライン会議ツールを使う方法
に分けられます。
専用ツールを使うメリット・デメリット
専用ツールとは、遠隔で同時通訳を提供することに特化して開発されたプラットフォームです。業界用語ではRemote Simultaneous Interpreting Platform、略してRSI Platformと呼ばれています。具体的には、Interprefy、KUDO、InterpreteXなどがあります。こういったツールでは、遠隔であってもエンジニアがオンラインにイベント中は常駐し、通訳者の声が確実に聴衆に届くようにさまざまな微調整を背後で行います。
メリットとしては、
・聴衆が自分のデバイスを使って通訳を聞くことができる
・専用の受信機は不要
・通訳の音質が良い
・通訳者のコンソールに必要な機能が搭載されているため、通訳者は訳すことに比較的集中できる
という点が挙げられます。
一方デメリットは、
・コストがかかる
ということです。
コストの例として、日本発のRSIプラットフォームであるInterpreteXの場合を見てみましょう。HPによると、
「TV会議、通訳者2名、聴衆10人、時間1時間」の場合は1,750円、
「セミナー、通訳者2名、聴衆100人、時間3時間」の場合の料金は25,500円とのことです。
InterpreteXの場合は、お客様側でプラットフォーム利用を手配していただくこともできますし、通訳者に丸投げする可能です。
一般的なオンライン会議ツールを使うメリット・デメリット
一般的なオンライン会議ツール、例えばZoom、Microsoft Teams、Cisco WebEx、Google Hangoutなどを使って遠隔同通を実現することもできます。
メリット
追加コストがかからない
慣れ親しんだ既存のアプリケーションを使うことができる
デメリット
聴衆がメイン音声と通訳音声の両方を聞きたい場合は、デバイスを2台用意する必要が出てくる。
通訳者側は複数のデバイスをいったり来たりしてマルチタスクをしなくてはいけないため、ミスを犯す可能性が高まる(例えば、ミュートにしておくべきチャンネルでミュートにし忘れる、など)
一般的なオンライン会議ツールを使った遠隔同通のやり方
それでは具体的なやり方を見ていきましょう。
遠隔で同時通訳をする際のポイントは、
「回線(オンライン会議室)を2つ使う」
ということです。
回線を2つ使って遠隔通訳する
お客さまには「同じ時間帯に会議を2件作成」してもらいます。
なぜ2つ必要か?というと、
・1回線はメインチャンネル
・もう1回線は通訳用チャンネル
として使うためです。
回線の数だけ端末も必要
通訳者は回線ごとに端末も分けています。私はメインチャンネルはPCで、通訳用チャンネルはiPhoneを使い、両方ともLANケーブルを挿して有線接続しています。もちろんマイクもそれぞれつなぎます。
会議が始まったら、通訳者はメインチャンネルから音を取り、通訳用チャンネルに通訳をしていきます。メインチャンネルのマイクは「終始ミュート」にしておきます。
通訳用チャンネルは自分の番になったらミュートを解除して、通訳します。
通訳者用の裏チャンネルが用意されることもある
以上のような「メイン+通訳チャンネル」という構成だけで済む場合もありますが、3本目の「通訳者用裏チャンネル」が用意されることもあります。
つまり、3台目の端末が必要になります。私の場合はiPadを使っています。
これは、交代の合図を身ぶりで伝えたい場合や、何かあった時のために通訳パートナーの視覚情報も欲しい場合に設定されるのです。
実はこの第3のチャンネルがかなりの確率で立ち上がることになります。私自身はこれまでFaceTimeとMessengerを使ってきました。LINE通話やチャットを使う通訳者も多いようです。
オンラインの同時通訳はマルチタスク
そのほか、通訳者間でクラウド同期できるタイマーを共有しているので、それもiPadで見られるようにしてあります。
そんなわけで、自宅から遠隔同通をする際は、かなりのマルチタスクとなります。
遠隔で同時通訳をする際の注意事項
通訳をしていて困ったことも出てきます。
一番は、ハウリングやノイズの問題です。聞くだけの参加者の方がマイクをオンにしていると発生します。マイクをミュートにすることはぜひ心がけていただきたいと思います。
このようなリモート通訳に関する注意事項などは、私も認定会員として所属する日本会議通訳者協会が、ペライチにまとめました。そして、「リモート通訳に関するお願い」という資料を無料公開しています。
通訳者を入れてオンライン会議を開催されるお客様には、是非ご一読いただければ幸いです。